むかしむかし

2006年9月26日 恋愛
中学生だった頃、あたしは仲良しの男の子のことがすっごく好きだった。
仲が良すぎて言い出せなかったけれども。
今では考えられないくらい純粋に彼が好きだった。
仲が良かったから席はいつでも近くて、授業中に器用に居眠りをする横顔を眺めたりしたもんだ。
中性的な優しい顔立ちのくせに、ズバズバきつい事を言うし、策略家でほんのすこし意地悪。
そのくせ笑うと可愛くて。意外に素直でまじめな一面もあって。でも秘密主義で。肝心なことはいつも何も教えてくれない人。

彼の声も好きだった。国語の時間に彼が朗読を当てられるとあたしはひそかに嬉しかった。
じっと彼の声を静かに聴いていられる時間だから。
読めない漢字があると彼は一瞬だけ息を止める。それは「助けて」の合図。
小声で教えてあげるのはたいていあたしの役割だった。
放課後はゲラゲラ笑いながらこっくりさんをしたり、下校時間になるまでふざけたり、ささいなことだけど、本当に幸せで、
今でもそこだけ切り取られた写真のように、鮮明に思い出せる。

同じ高校を志望していたのに、彼は直前でランクを下げてしまった。なんでか聞きたかったけど、聞くことはできなかった。
だってただの友達にすぎないわけだし。
秘密主義の彼は、女友達をあんまり立ち入らせてくれなかった。
いや、しつこくして嫌われるのが嫌で、立ち入ろうとしなかっただけかな、今思えば。

結局告白も出来なくて、彼は高校に入ってすぐ彼女が出来て、疎遠になってしまった。
あたしは彼がずっと好きだったけど、どうしていいか分からなくて
結局告白してくれた同じ学校の人と付き合い始めた。
もちろんその人のことは元々キライではなかったし、付き合い始めてすぐ好きになったけれど、彼を「好き」と思った気持ちとは少し違う気がした。
その人と別れると、また告白してくれた人と付き合い始めた。
あたしはずっと、似たような恋愛を繰り返してる。

思えばアレがあたしこれまでの人生でただ一度の「片思い」兼「初恋」だったのかもしれない。
初めて自分から人を好きになった。臆病者のあたしは、何も出来なかったけど。
彼がそこにいるだけで満たされていた。まるで少女マンガ。
でも嘘偽りなく、それがあたしの本心だった。
もう、あんな風に人を好きになることは出来ないんだろうか。
大人になると、無理なのかな。

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